エッセイ「Takaの四方海話」vol. 8

テレビからの「オフグリッド」

コロナで失われた2年。「当たり前」と思っていたものが崩れた。それまでの日常が奪われ、人々は孤立した。毎日、報道される感染者の数を耳にしては憂い、やっと終息の出口が見え始めたと思ったらウクライナ侵攻とは、きな臭い。国際情勢は株価や為替の変動に大きく影響し、原材料や燃料の高騰でコロナ後の世界は混沌としてきた。これらの情報の多くはインターネットを介してもたらされ、テレビがここぞと囃し立てる。折角、ハワイで暮らし始めてもこれでは何処にいても気が休まらない。

職場である大学では事務方なので教鞭を取るわけでは無いし、もとより大学は非営利法人なので経済活動から距離がある。ならばと一念発起して、ネットを見る時間を制限し、テレビをやめ旧式のラジオを買った。ネットとテレビからの「オフグリッド」だ。これまで暇さえあれば携帯片手にどれだけ多くの情報に時間を費やしてきたのかと思うと恐ろしい。

民間企業の場合、多くを将来投資をしているわけだから、少しでも前もって備えるに越したことは無い。為替や先物取引の変動が、いかにモノづくりに直結しているかは嫌というほど経験してきた。ところがである。大学が投資しているのは、将来を託す若者たちであり、学術分野によっては投資対効果がわかりにくい。もとより経済では計り知れない分野も多く、また、その多くは人間にとって大事な学問だといえよう。それは短い期間では為しえないことが多く、「志(こころざし)」を実現するためには、安定した経営基盤を確保してあげることが私の職務だ。

儲かるか損するかの尺度ではなく、長い目で見た投資、しかもそれは何十倍にも何千倍にも膨らむ夢をはらんでいる。先月のアースデーでビーチで一緒になった人から、「私たちが地球にできることは何か?」と聞かれたが、答えに窮した。その人は、今の歳になって感じるのは、子供の頃に感じた「あの頃」の明るさが大事だという。朝、明るくなると家畜の世話をし、夕方、暗くなると夕食を囲んだあの頃はもっと暗かったが、将来の希望をもった心は明るかった。そう、照明はこんなに明るくなったけど、コロナにウクライナ、心の中は靄が立ち込め、今、心は暗い。まず、照明を消すことが、僕が地球にできることだと話してくれた。ビーチハウスに戻って、スタンドライトひとつでラジオを聴いて、明るい気持ちを取り戻そう。