古材でつくるスパイキー

その昔、日本に初めて輸入したオーストラリアの「スポッテッド・ガム」というハードウッドで、当時勤めていた会社のマリーナ「シーボニア」にボードウォークをつくりました。ここで木材のことを指南してくれたのが、鈴木さんという日本を代表する船大工さん。比重が1.05ほどあり、組織が密で、あまりにも硬い木材で、切るのも孔をあけるのにも苦労しました。親方(鈴木さん)は、道具の使い方や木材の特性まで、たくさんのことを教えてくれました。
現場を終え、本社に戻る挨拶に伺った時、仏頂面で「これ持ってけ」と頂いたのが写真の上段のスパイキーです。
※スパイキー:もやいロープの先端にアイ(わっか)をつくるために、ロープを編むための道具

あれから30数年が経ち、友人への贈り物として、ハードウッドの端材でスパイキーをつくってみようと思い立ちました。親方からの言葉を思い出しながら、写真の赤茶色の2本をつくり、夫婦スパイキーとして友人夫婦に贈りました。(素材:マニルカラ材)
実際につくり始めると、親方の作品は削り出し方、フォルム、磨き方など、どこにも手抜きがないことがよく分かります。そんな丁寧な仕事をして、出来上がった作品を20代半ばの生意気な若者に贈ってくれたのです。30数年後、若者は壮年となった現在でも、相変わらず木材を使い続け、それを後世に残す仕事を生業にしています。誰かを想い、モノをつくること。時代は変わっても、変わらないこと、変わらないモノを伝え、残していきたいですね。