太陽光×ロボット草刈機

酷暑の続く沖縄。東京から移住し、はや5年が経過したが、最も大変な作業は草刈りだ。スコールは植物たちには大きな恵みであり、昨日刈った箇所の雑草が、今日は3cmも伸びていることがある。この5年間、沖縄の雑草たちと戦いながら、過ごしてきたようなものだ。
これまでの武器は、YAMAHAのエンジンで動く自走式草刈り機と、マキタの草払い機と剪定鋏と鎌。これらを季節や場所、雑草の種別により使い分け悪戦苦闘し、ひとつのノウハウを得た。それは、こまめに刈り込んでいると、高く成長する雑草は減少し、背の低い野芝のような比較的管理のしやすい雑草が増殖するようになることだ。5年の歳月をかけ、多種多様な雑草が生息していた里道は、管理のしやすい低層の草たちの天国となった。それでも雨の多い月は2週間に一度は刈り込まないと歩きにくくなる。

この「こまめな刈り込み」をロボット草刈機にやってもらおうと、ロボット草刈機を調べまくったが、今のスタンダードは、敷地(作業)境界に、ワイヤー(電線)を埋め込み、その範囲内をロボットがランダムに移動し、草刈り作業を行うものだ。この方式のものは、花壇など、ロボットに進入してほしくないエリアにもワイヤーを埋める必要があることから、借りた庭が広すぎることや、自由なレイアウト変更ができないことが不満で、導入に足踏みをしていた。ところが、アメリカのSUNSEEKERというメーカーがGPSを補足しながら作業ができるロボットを開発し、日本でも販売を開始したのだ。早速、日本の総代理店にコンタクトを取り、説明を受け、購入を決めた。本社が新潟県のホンダウォークという会社で、PLOWというブランドで屋外作業機械を展開している。購入を決めたのは、担当者がオフグリッドに関心があり、僕の計画するソーラー発電によるロボットへの電源供給に理解を示してくれたことが大きい。

SUNSEEKERはマシン本体はもちろんのこと、GPSを受信する基地局への給電が必要だ。これをソーラー発電によるクリーンエネルギーで賄いたい。
スペックを見ると、マシンのバッテリーは10Ah、下表には記載はないが20Vの給電だ。なので、ソーラーパネルから充電したバッテリーから直に充電することができない。そこで、たまたま在庫にあったポタ電(エコフロー リバー2MAX)を経由し、充電することにした。ポタ電は小さいながらも512Wh (20Ah 25.6V )の容量を持っていて、うまいことソーラー発電を組み合わせることで、バッテリー満充電1回分の作業をさせることができそうだ。

そして基地局への給電は、以前に設置した井戸の揚水ポンプを稼働させるソーラーシステムから行うことにした。井戸水の水質検査をしたところ、大腸菌が多く、飲み水としては使用できないので、海あがりのシャワーや庭への散水程度しか使用していないので、基地局への給電は全く問題はない。

ソーラーパネルはNydell(ヨット)から折り畳み式の160Wのパネルを拝借してきて試験を行っている。この日は晴天で、160Wパネルをデッキ上に真上を向け設置し、発電テストを行った。5年前のパネルなので、160Wパネルだが、100W(62.5%)を発電し、エコフローに給電している。そしてマシンには194Wで充電している。

ここのところ、数日間試験をしたが、100Wを発電するのはまれなので、本運用ではパネルの発電量を増やす必要がある。今のところ、150Wパネルを2枚新設する予定だ。この場合、300W×50%だとしても150W、マシンへの供給量をそのまま発電するとしたら、65%(195W)の発電が行えれば、数字的には発電した電力をそのまま供給できる計算となる。一方、電力を消費する作業エリアの設定も肝心だ。数日間試験をしたところ、マシンは満充電で2時間ほど稼働することが分かった。この2時間で250㎡程度の面積をこなしてくれる。なので、1日の作業料をこの程度に設定することで、この小さなポタ電でも太陽光だけでロボット草刈機を動かすことができるのだ。商用電源につなげば、作業と充電を繰り返し、日に何度も稼働することができるのだが、マシンにも休息は必要だ。

しかし、このマシンが酷暑の中、正確に作業をしてくれる姿を見ると健気さを感じる。その後ろ姿はまるで砂浜を歩くウミガメに似ていて、愛嬌さえ感じる。このエッセイを書く相方のTAKAがハワイ在住ということもあり、マシンに「Honu」と命名した。ハワイ語でウミガメを意味するが、健気に働いてくれる「ホヌ」を眺めているだけでほのぼのする。沖縄の商用電源のほとんどは火力発電によるものだ。石炭を輸入し、それを燃焼させることで電力を生み出しているのだが、かわいいHonuにはそんな汚い食事を与えるわけにはいかない。太陽の光が作り出した新鮮でクリーンな食事をして元気に働き続けてほしい。これもオフグリッドの大きな魅力のひとつだ。
まだ試験運用を始めたばかりだが、酷暑の労働から解放され空いた時間は大きい。ヒマな時間が増えると人間はろくなことを考えないが、空いた時間にやりたいことはたくさんある。
5年という歳月で学んだことを、これからの5年に活かしたい。
まずは、僕と同様に5年間働きづめだった機械たちのメンテをしよう。人間も機械もメンテが大切だ。