vol. 11 「虹と流れ星を観る暮らし」

おおざっぱな天気図

「今日は降水確率50%で晴れ時々曇り、所によってにわか雨。外出される方は、念のため折り畳み傘をお持ちください」と、お馴染みのフレーズだ。これほど細やかに、しかも行政区ごとに天気予報を出してくれる国は他に見たことがない。道端で隣人と会うと「今日はお日柄も良くて」とか、雨天に知人宅を訪ねると「わざわざお足元の悪い中を」とか天気に纏わる挨拶が多い。それだけ、日本人は天気の変化や季節の移ろいに敏感なのだ 。

 ここハワイでは、「今週は貿易風が吹くので暫く涼しい日々が続きます。オアフ島周辺には小型船舶アドバイザリーが出ています」とざっくりだ。一日の中で何度となく天気は変わるし、此処が晴れていても、島の反対側で雨が降るのが日常だから致し方無い。街で雨宿りしている人は見かけるが、傘を持ち歩く人を見たことが無い。雨あがりには、かなりの確率で虹が出るので、ついつい空を見上げてしまう。

 今の住まいは平屋の旧兵舎なので、風通しがいいと言えば聞こえは良いが、雨風を凌げること以外、内も外も大して変わらない。野生化したニワトリは軒下で卵を温めているし、弱々しい蚊は線香を焚けば追い払える。ヤモリが同居しているので害虫は少ない。床はモップで、食卓は布巾で、棚は雑巾を使い、掃除機は持っていない。さすがに長時間の停電や断水は困るが、焦らず少しの時間を凌げば良いと思うようになった。明かりは充電式のランタンがあるし、携帯で情報は得られるし音楽だって聴ける。長期保存可能な水は普段から積み上げてあるので問題無い。

 先週、コミュニティ一帯が一晩、停電した。月夜では無かったが外の方が明るいのでグラスにラムを注ぎ、ラナイに出てみた。なんとなく空を見上げたら流れ星に出くわし、ちょっと得した気分になった。少年の頃、プラネタリウムが好きだったせいか意外と星座を覚えている。東京で暮らしていた頃、星空を肴に一杯やるなんて思いもよらなかった。オフグリッドへの一歩は、身近な不便を楽しむことからかも知れない。