エッセイ「TAKAの四方海話」 vol.1

オフグリッド話にお付き合いください

 電力供給網から切り離した生活と聞けば、薄暗いランプの下で細々と暮らす山小屋暮らしをイメージしてしまう。暖を取るために火を熾し、仕留めた獣の毛皮を羽織り、木の実を採っているんじゃないかと想像が膨らむ。古来、日本の人里は山に囲まれた盆地に発達し、農業を通じて共同生活を余儀なくされた。山の向こうの出来事を話すことを四方山話(よもやま話)といい、人々の世間話に花を咲かせた。山を越えて都に繋がる道があり、神様は身近に居た。「昔々」で語り始め「めでたし、めでたし」で終わる。「聞いた話なんやけど」で始まり「知らんけど」で終わる関西人に似ている。いくつもの疑わしい話でさえ、いつしか真実味を帯び、語り継がれるうちに言い伝えとなり、まことしやかに語られる。スタートが「山の向こう」であり、語られるのが人里であるためか、その土地の川や山、岩や木といったものを神と崇める信仰の歴史に繋がることが多い。

 他方、エジソンが電気を発明したのは1847年だから、その前の世界はオフグリッドだったいえる。アメリカが「発見」されたのだって大航海時代の賜物だと思うと、15世紀から17世紀ということか。主にポルトガルやスペインによってアフリカ、アジア、アメリカへの大規模な航海が行われた頃、航海は遭難や難破、疫病や抗争によって船乗りの生存率は20%にも満たなかったらしい。遠征に成功すれば、莫大な富と名声を手に入れることが出来たというのだから、船の上は生存競争だったに違いない。かくして欧州には「海の向こう」の話が多く伝わり、それは未知の、時に夢のようなワクワクする話が多い。日本だって「黄金の国、ジパング」と伝わった。

 転じてこのコラムは「四方海話」と題した。筆者が生活の中で身近に感じるオフグリッドや、海の向こうのオフグリッドを垣間見たり、趣味人として海を意識した話をしたい。それは山小屋ではなく、水辺の桟橋で、快適なコテージで想いを馳せたい。

投稿者: Taka

大学では海洋気象学を専攻し、海を眺めるより海から陸を見ようと本格的に海と付き合うことになった。以来、ビーチからオフショアまで7カ国20年の海外暮らしを経て、最近は駿河湾をフィールドに釣りやセーリングを嗜む。座右の銘はLife is a journey(人生を楽しもう)。