企画提案型実証事業(木柵・舞台)

On 07. 03. 2022 by sai1525

令和3年度 林野庁の補助事業である外構部の木質化対策支援事業(企画提案型実証事業) に採択をいただき、この度、検査及び成果報告会が終了しました。
今回は全国で13件の事業が採択され、報告会では全件のプレゼンがありました。弊社の事例は⑧沖縄県・木質化普及に向けた熱圧加工処理による耐久性及び意匠性検証事業として、物林株式会社さんが紹介してくれました。

どの事例も興味深かったのですが、中でも⑬今治港サイクルスペース市民提案リニューアルプロジェクトは参考になりました。
詳細はこちらのページでご覧いただけますが、公共の空間を地元企業と市民が協力をしてつくりあげたスペースで、社会的に意義のある取り組みだと感心しました。

さて、我々の企画事業ですが、国内でもっとも流通している木材である「杉材」を沖縄の外構でも活用して行こうという趣旨で、表面処理や塗装を行うことで、高温多湿な環境下での耐久性を検証していくことを目的としました。
県内には杉が生息していません。戦後、焼け野原となった日本は、政府の指導で成長が早いスギを植林して、資源確保に乗り出したと言われていますが、沖縄県はそのころアメリカに統治されていたので、対象外でした。 なのでスギやヒノキの植林が、ほとんど行われていなかったのです。
重度の花粉症である私にとっては嬉しいことですが、安価な杉でさえ本土から運搬するとなると、(容積を取るので)そこそこの単価となるため、沖縄の建設コストは高くなってしまうのです。しかも高温多湿の環境は木材の腐朽を促進するため、これまであまり木材の利用が進んでこなかったのだと思われます。沖縄のお家(建築物)がコンクリート造が多いのは、台風に強いというだけでなく、コストや耐久性から選択されてきたのかもしれません。

一方で、近年になって木材の防腐処理技術が向上し、木の持つ温かみや、コンクリートのように蓄熱しないという性能が認められ、最近は住宅着工件数の30%程度が木造になってきているようです。沖縄の伝統的な建築は赤瓦が乗った木造ですしね。環境問題やSDG’s的な思考が浸透しつつあり、このような傾向が見られはじめているのかもしれませんね。
このような背景から、国産の杉材(鹿児島産)を素材として使用し、木柵とデッキを企画することにしたのです。

1.杉材への加圧注入処理

前述の通り、沖縄は高温多湿の環境ゆえに腐朽菌や害虫、シロアリへの対策は必至です。天然木材は同じ丸太から加工した材料でも木の中心部(芯材)と外側(辺材)ではかなり性質が異なります。そこで、できるだけこの性質の差を少なくするため、全ての材料にACQ(Alkaline Copper Quaternary)加圧注入加工をすることにしました。
ACQ処理の特徴は

①長持ち腐朽やシロアリなどの虫食い防ぎ丈夫でながもち
②環 境焼却しても無害で、灰も一般産業廃棄物として処理できます
③情 緒緑になじむ青緑色で落ち着いた空間が広がります
④手 軽腐食に強いので、土に触れる施工も問題ありません
⑤安 全人体や自然環境に影響がありません

ヒ素やクロム化合物を含まない、JISおよびJAS規格の安全な防腐・防虫剤です。木材に塗布するのではなく加圧注入するため、木材内部に浸透し防腐・防虫効果が長持ちします。薬剤が固着すると揮発や流出がなく汚染の心配もないので人や自然界に対しても安全です。

耐久性能はJASで薬剤の注入量(吸収量)によりK2、K3、K4と性能が区分されており、沖縄の海のそばの屋外という環境ゆえK4を選択。
K4は保存材を5.2kg/㎥吸収させなければならず、防腐・防蟻処理を目的としたK3が2.6kg/㎥ に対し、倍の注入量に規定されています。
薬剤メーカーの試験によると、杉の辺材を原料とした木杭にK4処理を施した試材の耐久年数は24年以上と、必要十分な耐久性が期待されます。
しかし実験数値通りの結果が出ないのは世の常です。このACQ-K4処理に加え、他にも耐久性の向上が期待できる加工、塗装をして、沖縄における杉材の活用の可能性を探っていきます。

2.使用面のHR(ヒートローラ)加工

ヒートローラー加工(以下、HR加工)とは、木材に一定の圧力と熱を与えることにより、杉材がヒノキと同等の硬度になり、耐久性・光沢が向上し、傷がつきにくくなる加工です。
上の写真の左側のデッキ材がHR加工品、右側が加工なし(プレーナー仕上)となります。写真を拡大して見ると、あきらかにHR加工品の表面は滑らかで、木目が浮き出ていることが判ると思います。京都大学さんへ表面硬度の測定をお願いしたのですが、HR加工により硬さが増すことが確認されました。
上記したACQの特徴「 ③緑になじむ青緑色で落ち着いた空間が広がります 」とありますが、上の写真の加工なしは、この青緑色です。正直、この青緑色はあまり好みではないのですが、HR加工品は青緑色が消え、杉本来の持つ赤見に戻ったように感じます。これはHR加工の熱によるものだと考えていますが、薬剤感が薄れ、見た目にも良い加工だと感じます。

3.表面塗装

左:サドリンクラシック・・・低塗膜形成型の木材保護 (アルキッド樹脂系)塗料
右:ログウッドカラー・・・浸透性造膜型水性保護塗料

木柵は2種類の塗料を試験しています。 左のサドリンはナチュラルな雰囲気。右のログウッドカラーは光沢が美しく、高級感があり、この光沢が長持ちするというのがセールスポイントのようです。
塗料で表面を保護することにより、紫外線や雨から内部の木材を護るというのが塗料の役割です。なので、色や艶というデザイン的な要素も大切ですが、浸透性や密着性という塗料としての基本性能を重視する必要があります。特に今回はACQ-K4処理を行い、その後に塗装をするため、木材内部から揮発するの薬剤との相性も重要で、これは加工を行った鹿児島のアリモト工業さんにお願いし、美しく仕上げていただきました。

4.杭式基礎と調整プレート

木柵、デッキともに、基礎はコンクリートではなく、自社の鋼製杭「螺杭」で計画しました。鋼製の螺旋状の杭で、大きなビスを土に打ち込むようなイメージをしていただければと思います。この杭は今後のモノづくりを考えるにあたり、最終的につくったモノを解体する際「元の地形に戻すことができる」ために開発した製品で、地球の永続性を企図したものです。
動画は打ち込み時のものですが、機械のギヤを反転させれば、同じスピードで簡単に抜くことが可能なのです。

機械で計画レベルよりも少し深めに打ち込み、上の写真のような手動の工具で逆回転させれば、ミリ単位まできっちりと計画高に調整することができます。
杭を打ち終わった瞬間から、上部工を載せることができるので、コンクリート基礎のように床掘、型枠設置、コンクリート打設、養生、脱型、埋め戻しという工程が不要で、大幅に工期を短縮することができるのです。

杭は施工する現場の土質や職人さんの腕によって、正確な位置にぴったりと打てることは滅多にありません。そこで、このズレを修正するのが調整プレートです。座標点であるXYZのうち、Z(高さ)は手動の工具でミリ単位に合わせることができるとはすでに紹介しました。この杭の頂部フランジに乗せているハット型のプレートが調整台座で、これを用いて平面座標であるXYを補正します。
上の写真は木柵の基礎ですが、柵の延長方向に3つ、前後方向に2つの長孔をあけてあるのが分かると思います。延長方向側の長孔で支柱間の距離を、前後方向で出入りを調整することで、正確な位置に上部工を固定することが可能となります。

5.スチール構造体

沖縄の湿度や台風への対策として、構造部はスチールで計画をしました。湿気対策としてメインのデッキはGLから600mm上げ、台風対策として、30㎡(5m×6m)のデッキを12本の螺杭で支持する設計としています。
46m/sの風速を仮定した場合、このデッキを浮き上がらせようとする揚圧力は最大で8.7tもの力になります。事前の杭の引抜試験で2t/本の能力が確認されていたのですが、十分な余裕を持って12本の杭を使用しました。
木柵の杭も同じ仕様とし、十分な台風対策を取ることとしたのです。
そしてこのようなゴツいスチール構造が出来上がりました。

鉄は天然資源である鉄鉱石を還元(石炭等で酸素を除去)、精錬(不純物を除去)し、圧延・熱処理・表面処理などのプロセスを経て、様々な特性、形状の鉄鋼製品が製造されます。鉄鋼製品はその後、自動車や家電製品などの耐久消費財、船舶や鉄道などの大形輸送機器、飲料や食品の容器、様々な機械やプラント、ビルや橋梁などの社会インフラなどに形を変え、最終製品として使用されます。これらの製品が社会においてその役割を終えたあと、素材部分の鉄鋼はほぼ全量がスクラップとして回収され、再び新たな鉄鋼製品の原料として再利用されます。

それにより、天然資源の使用量を減らし、消費エネルギーと環境負荷を大きく減らすことができています。そして再び新たな鉄鋼製品として自動車やビルとなり、いつの日か再びスクラップとして回収され、このライフサイクルが無限に繰り返されています。鉄鋼製品はこのようなクローズドループリサイクルにより、効率的にリサイクルされているのです。
saiブランドが積極的に鉄という素材を使うのは、このクローズドループリサイクルが確立されている素材だからです。

5.木部(上部工)の設置

いよいよ木部の設置に入ります。杭位置を正確に調整し、スチールの梁を設置したので、あらかじめ工場加工された木部材を乗せ、ボルトで固定していくだけで組みあがっていきます。アリモト工業さんの正確な加工精度のおかげです。

木柵はルーバー材と胴縁とを工場でパネル化してきてくれたため、2人でパネルを運び、支柱に溶接されたアングルに乗せれば、あとはボルトで固定するだけという簡単な構造です。

6.シンボルツリー

沖縄の強い日差しを和らげるため、そして何より樹木の存在感は画一的なデザインのデッキに柔らかな印象を与えてくれることを期待して、ガジュマルを植樹しました。2014年に首里城に木製階段を設置する工事でお世話になった元請業者さんが糸満市内の会社であったことを思い出し、相談をすると、図面を見て「これは360度どこから見てもきれいな樹形でないといけない」と責任感を持って下さり、わざわざ北部の名護までこのガジュマルを探しに行ってくれました。
しっかり植樹工事までして下さり、現場に涼しげな影をつくってくれました。
西崎緑地開発さん、ありがとうございました。

7.仕上げ工

木柵:W2,000×H1,800×L38,000
面材:杉40×40/杉80×30
胴縁:杉70×100/杉70×115
支柱:スチールH-150×150×7×10
杭:螺杭D-16/T-12

デッキ:メインデッキ、アプローチデッキ、スロープデッキ
デッキ材:杉100×30/杉90×90
根太:杉85×175
梁: スチールH-150×150×7×10
杭:螺杭D-16/T-12

8.最後に

出来上がったデッキと木柵を見に、地元の人々がたくさん訪れてくれます。そして「この舞台いいねぇ」と褒めて下さるのです。
舞台???
あとで分かったことですが、沖縄の伝統芸能である三線や舞踊を披露するステージがあるのですが、これをステージではなく、舞台と呼ぶそうで、地域の皆さんにとって、このデッキはまぎれもなく「舞台」なのです。
今回は林野庁の補助事業として、この企画を採択いただいたので、これは皆さまの税金でつくっていただいたとも言えます。なので地域の皆さまの会合やイベントなどの地域行事にこの施設を提供させていただくつもりです。

また、沖縄での新規事業としてスタートした「オフグリッド」の体験施設としての活用を計画しています。太陽光で発電・蓄電した電力で、キャンプ体験をしていただきます。この天気でどのくらいの発電をしているのか。どのような家電がどのくらいの電力を使うのか、太陽のチカラでつくられた限られた容量の電力に対し、きちんと優先順位を考えて使う。地球に対して敬意を持って自然に触れる時間をここで体験いただきたいと考えています。

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