2006年の恋人に逢いに

On 08. 07. 2025 by sai1525

2006年。鹿児島港の北埠頭に設置されているボードウォークが設置後、それほど時間が経っていないのに、デッキ材が暴れ、歩行者に危険な状態になっていると相談を受けました。早速現地へ飛び、診断をするとデッキ材を支える根太が腐朽していました。ここで「診断」という言葉を使いましたが、ちょうどこの年に木材劣化診断士という資格がスタートしたのです。
この資格を用いて劣化原因を特定し、設計事務所として改修案を作成、提案する。 思えば、この仕事が現在のsaiブランドの礎になっています。

当時、社内から「デッキ材を販売しないで、メーカーとして採算が取れるわけがない」などという批判を受けながら、ハードウッド(輸入硬木材)の黎明期から取り組んできた意地と愛情が勝り、根太に腐る要素のないマリンランバー(ガラス長繊維強化プラスチック発泡体)を提案し、県に採用をいただきました。会社としては、根太と根太を固定するボルト類、そしてマリンランバーにデッキ材を固定するビスの販売だけですが、以降、この改修の需要が拡大していったのです。いわば当社の1丁目1番地のプロジェクトとなった事例でした。

先週、鹿児島へ出張した際、ここに立ち寄りました。
子会社への事業継承のため、鹿児島~小倉~広島の顧客への挨拶まわりに乗じて立ち寄ったのですが、当時と何も変わっていないこのボードウォーク上に立つと、さまざまな感情が沸きあがりました。

この現場のために開発した太く長いビスは、その後、多くの現場で使われました。当社のビスの特徴である六角孔は、若い頃にハードウッドの研修に行ったオーストラリアで標準的に使われていたもの。それに日本の技術を導入し、マリンランバー用に新たな製品を開発したのです。素材、螺旋のピッチ、歯角など、製品の形状をすべて新たに開発しました。

ここを訪れた時に、まず目に入ったのは、デッキ上に管理車両の軽トラックが乗っていたことです。作業員さんに挨拶をすると、何事もなく軽トラはボードウォーク上を走っていきました。もちろん、この利用を想定した構造でつくっているので問題はありません。
19年ぶりに再会した当時の恋人は、 強く、美しく、そこに居続けてくれました。
事業を引き継ぐ後輩に、どんな言葉を贈るより、大切なことが確実に伝えられたのではないでしょうか。

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