山道に階段を創る

On 16. 03. 2020 by sai1525

福島県のとある山道に階段を設計施工しました。
話をいただいた時に入手した測量データがしっかりしていたので、ここまできっちり測量がされているならと、H型鋼でフレームを組み、現場でボルトアップするだけで構造が完成する設計を提案し、採用をいただきました。
ところが、入札後に事前に現場を視察しに行くと、測量データに載っていない岩や、周辺の環境があまりにも想定外で、これはこのままでは実現できない!と設計変更をお願いすることにしました。

ただ「この現場にコンクリート基礎を打設するのはあり得ない」という方向性だけ継承し、「いかに現場に即した施工ができるか」をテーマとした設計に変更することを提案し、発注者に了解を得ました。
つまり現場の状況を判断し、「打てるところに杭を打つしかない」のです。

計画している階段の、最も低い箇所と高い箇所のレベル差、距離を測量し、その中間部分に踊場を設け、階段で結ぶのです。
設計した私は現場に行けなかったのですが、事前に社員とその旨の打ち合わせを綿密に行い、現場に臨んでもらいました。

遠景で見ると大したことがないように見えますが、近景だとこのような急傾斜となっています。
ここにコンクリート基礎という選択肢はないと思います。
この螺杭という製品を開発していなければ、このような設計・施工は実現できなかったと思います。

測量をし、杭を7本打つのに丸2日かかったそうですが、3日目には構造物のアウトラインが見え、ほぼ設計と同じカタチに持ってきてくれています。
ここまでくればあとはいつもの仕事なのですが、ここまでたどり着くまでに、「土との闘い」で悪戦苦闘したそうです。

幅員が1mの階段デッキなので、構造は1本脚としました。
かなり前、平成18年くらいに、沖縄県中城村の山道に、同様の構造で階段を造ったことがありました。
当時は傾斜地ということもあり、柵は横格子だったのですが、今回は縦格子。
確かに縦格子の方が安全性は高いのですが、このような傾斜地では横格子を勧めるべきですね。
格子の1本1本を角度切りして固定していかなければならないのです。

前記した通り、「打てるところに杭を打つ」設計に変更させていただいたため、階段の幅や角度は現場で決定するしかないため、プレカットができないのです。本来、工場や平坦な場所で行う加工を、斜面地で行わなければならなかったのはさぞかし大変だったでしょう。
ともあれ1週間に及ぶ工事を完了させ、無事に戻ってきてくれました。
通常の工事は図面通り「造る」のですが、今回は現場に合わせて「創る」工事でした。
担当した社員にとっても大きな自信になったと思います。
ご協力いただいた元請業者様、商社様、ありがとうございました。

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