横須賀市ヴェルニー公園ボードウォーク改修工事

On 03. 02. 2017 by sai1525

神奈川県横須賀市。ここは私の故郷。
JR横須賀駅前から京急汐入駅にかけて、海沿いに軍港を臨む公園があります。
その名もヴェルニー公園。
公園の対岸にフランス人技師ヴェルニーがその建設に貢献した横須賀製鉄所が望めることが、この名の由来とあります。
私は高校生まで、この街で育ったのですが、当時は臨海公園という公園名でしたが、2001年にリニューアルされ、現在の姿になったそうです。


故郷に錦を飾るという表現がありますが、この改修工事は海沿いのボードウォークの傷んだ根太だけを交換し、床板(デッキ材)は再利用するという、工事が完了しても見た目にはほとんど何も変わらない工事なのです。
いや、言い換えれば先人たちが残してくれた良いモノは残し、経年し、ダメになった所だけを交換するという非常に意義のある工事なのです。
それゆえ、地元の有限会社シーガルと組んで、「チーム横須賀」で工事に挑みました。


事前に木材劣化診断士として、構造の状態を診断したのですが、床板のほとんどは15年経過しても健全な状態が保たれていたのですが、床板を支える根太(ねだ)材が下の写真のように腐朽が進行していました。
白く変色している箇所が腐食箇所で、デッキ材の裏面にあたります。
インターロッキングから排水された雨水がここに滞水してしまい、腐朽の原因となりました。
根太を縁石から10cmでも離して設計していれば、雨水はデッキ下に排水され、ここまで腐朽は進行しなかったと思われます。
こんな少しの知恵で、構造物の耐用年は大きく変わるという実例です。

改修材に選択したのは、高耐食溶融めっき鋼板ZAMです。
スチール材と言えども、耐水すると錆の原因となるため、既存の根太より天端幅を小さくし、縁石際から排水ができるRC-75×45×t2.3断面を構造計算により算出し、上記の問題の解決策としました。
根太材を支える支持ボルトも既設のものを再利用し、エコな工事となる提案をさせていただきました。


ここまで来れば、あとはひたすら地元愛で施工を進めるのみです。
本人も横須賀在住のH氏に現場を託し、毎日の進捗報告を楽しみにしていました。


すると工事はあっという間に進み、上の写真は今回の工区の最後の区間です。
この男の背中から「もうすぐ終わるぜ!」という気合いが感じられますね(笑)


下地構造材がすべて更新され、安全なボードウォークとして無事に元の姿に戻りました。
これからもたくさんの人々を海辺に誘(いざな)う施設であり続けてほしいものです。


ひとつだけ自慢をさせて下さい。
saiブランドのデッキのトレードマークとなっている六角孔の専用ビスです。
ビスにかかる引抜力やせん断力、施工スピード等を徹底的に分析し、開発したこれ以上ないデッキ専用ビスです。
ビスの頭部はM5サイズのφ10mmに対し、本体の線形はM6となっています。
黒く焼付塗装した皿頭が、長い年月を経てエイジングしたデッキ材(イペ)ともよく馴染んでいます。
あまりにも馴染んでいたので思わず見とれてシャッターを切ってしまいました。

最後になりますが、発注者である横須賀市様、元請業者である川久保造園土木様、現場代理人のT様、商社のB社様、営業パートナーのF社様、施工をともに行ったシーガル様、皆さまのお蔭で故郷で初めてのお仕事をさせていただきました。
ありがとうございました。
この施設が長く長く、市民のみなさんに愛され続けますように。

後日、NHKの72Hという番組で軍港を望む公園に訪れる人々の人間模様を伝えるドキュメンタリーのロケ地になっていました。

http://www4.nhk.or.jp/72hours/x/2017-02-22/21/18531/1199166/

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